アトピーの方と日々接していると、時折「両親」がキーワードとして出てくることがあります。
本人が親に対して不満や、恨みに近い感情を持っている方は珍しくない。
「なんでもっと調べたり勉強してくれなかったのか?同じステロイドを使うだけで全然治らない。ずっと不満でした。恨んでいます」
こんな感じの内容の言葉を聞いたことは、1度や2度じゃない。
「親を恨んでいる」
と聞いて、あなたはどう思いますか?
「人を恨んだってしょうがない」
と思いましたか?
「なんだ、病院には連れて行ってるんだからいいじゃないか」
と思いましたか?
・・・
「人を恨んだってしょうがない」確かにこれは正論です。
ですが、「それはあなたの感想でしょ?」という話で、「大事なのは本人の感情ですよ?」ということなのです。
「あなたはどう思っているの?」
これを親が聞けたかどうか・そういう雰囲気を作れていたかどうかが大事なのかなと思います。
「親がいろいろ病院へ連れて行ってくれてたのは覚えています」
感謝の気持ちで言葉を紡ぐ方も結構いらっしゃいます。
どちらも病院へは連れて行っているのに、心のうちは全然違うとらえ方です。
その理由の一つには、こういったことがあるのではないでしょうか?
親としては、子供のことを心配して病院に連れていって、処置をしてもらうことで安心したり、何か子供のために動いた気になっているのかもしれませんが、それは親の自己満足である可能性があります。
「あなたはどう思ってるの?」
「いまどんな感じなの?」
これを聞けているか?
本人の思いをちゃんと受け入れているか?
ちゃんと胸襟を開いて、その姿を子供に見せているか?「お父さん、お母さんはあなたのことを大事に思っているよ」そういう思いが伝わっているか?
子供の思いを聞いて、それに対するあなたの意見は求めてないですよ。
「傷を見られるのが嫌?そんなの気にしたってしょうがない」
「かゆくて眠れなかった?早く薬をつけなさい。ほら、保湿も早くしなさい」
・・・
親であるあなたの思い・考えをぶつけていませんか?
これをされると、子供は閉じますよ?
それが積み重なると、何も話さなくなります。
「うちの子、ちょっと状態を聞くと『もういいから』って言って何もしゃべらなくなっちゃうんです」
これ、ほんとに子供の問題??
子供の性格が難しいから、とか思ってない?
本人の資質の問題で、何も話さない子もいるけど、あなたが繰り返し子供の内側を閉ざすような言動してたんじゃないの?
「あの時、こう言われてから、もう何を言っても無駄だなと思って、それから何も話す気なくなったんです」
こんな話も何度も聞きます。
人の心は繊細で分かりづらいです。
わからないけど、想像し、思いを馳せること。
自分の意見はいったん脇に置いておいて、まずすべてを受け入れること。
本人の存在を丸ごと受け入れること。「あなたはこう思っているんだね」と。
こうしたらいいんじゃない?ああしたらいいんじゃない?はいらない。
それはこうなんだよ。こうしとけばいいんだよ、もいらない。
親のやることは子供を丸ごと包むこと。
その中でしか子供は活かされないのではないでしょうか?
あなたの子供がアトピーに苦しんでいるのなら、一度我が身を振り返ってみてください。
ちゃんと、聞けている?その質問、押しつけになってない?
まずあなたが開いてる?受け入れている?
そして、、、自戒です。親のあなたに説教するためにこの記事を書いたのではありません。自分の説教のためにこの記事を書いたようなものです。
鍼灸師である私自身にもこのことは刻まなくてはいけません。
アトピーのことをいろいろ勉強して知識と経験、実績が身につくと、「あ、それはこうなんですよ」「今こんな状態で、ちょっと今は辛いかもしれないけど、この後こうなるんですよ。それでこの後良くなってくるから大丈夫ですよ」なんてことを軽々しくしゃべりがちです。
「良くなるから大丈夫」と安心してもらうため、そういう説明を口走ってしまっている。
「あなたはどう思ってるの?」「いまどんな感じなの?」これが全く抜け落ちている。説明した後に「しまった・・・あの人が聞きたかったのはこういうことじゃない」と反省することしきりです。人に対して偉そうに講釈垂れてる場合じゃない。
患者さんは色々質問してくるけど、その質問の答えが欲しいんじゃない。かもしれない。
その奥にある、言葉にならないもやもやとした不安や、不満をまずは受け止める。
それを感じとりつつ、たとえそこがわからなかったとしても、そこに思いを馳せつつ、質問に誠実に答えていく。施術していく。そういうことがとても大切なんじゃないでしょうか?屋根の下、同じ一つの空間で、少しではあるけど同じ時を過ごす。わざわざ鍼灸院へ繰り返し通ってもらうということの価値はこういうところにあるように思います。
毎年花粉が流行るこの時期になると、アトピーも一斉に悪化しだして、心折れる方が増えます。昨日も今日もそういう方がいらっしゃいました。
そんな人の心の支えに少しでもなれるよう、そこだけは謙虚に誠実に、心開いて患者さんを包み込めるような存在・場所でありたいなと思う次第です。