「昨日の夜いきなり顔が赤くなって、それまで顔の赤味も引いていたのに、それの原因がわからなくてすごく不安です」
時は2月末。
高校3年生、大学進学が決まっているサッカー好き男子の放った一言です。
ちなみに、彼の紹介で「僕のヒーローアカデミア」略して「ヒロアカ」という激アツ王道マンガを大人買いしてしまったことは、ここだけの秘密です。
そんな彼ですが、思春期ですから、かゆみがあることもつらいですが、かゆみがなかったとしても顔の赤味が引きづらいということは非常に気になる年頃です。
初診よりだいぶ顔の赤みが引いてきて、「なかなかいい感じになってます」という経過報告をいただくことが多かったですが、この日は上記コメントでした。
「昨日の夜サッカーやったからでしょうか?」
「反則※したからでしょうか(※甘いものを食べたの意)」
「花粉って関係ありますか?」
アトピーの経過の仕方は一直線ではない
他にも質問がありましたが、いくつかやり取りする中で、とにかく原因を知りたい様子でした。
原因がわからないのが納得できていないという感じです。
ちょうど先週あたりから、気温が上昇してきて、顔の赤みが再燃してくる方が増えていました。
ということは当然、気候の影響・気温の上昇という、自然環境の変化も理由として挙げられると思います。
ただ、彼とのやり取りの中では、こうお伝えしました。
「アトピーは右肩上がりに一直線には経過していかないものなんです。
良くなったり、足踏みしたりを繰り返しながら、だんだん良くなってくる方が多いんですよね。
今回のような悪化に対して、理由がある場合もあるし、「これだ」と特定できないような場合もあるんです。
その日その日の悪化に対して原因が何だったか考えることも大事ですし、それをお伝えすることもありますが、もし、「サッカーをやったから」という理由で赤くなったとしたら、それって悲しいことですよね?
サッカーが原因だとしたら、サッカーを辞めなきゃいけないって話になってしまうので。
アトピー悪化の原因を突き止めるよりも大事なこと
原因がサッカーであろうが気候の変化であろうが、その程度の変化で症状が出てしまうようであれば、その程度のことで悪化しない体を作っていくことが大事なんです」
と。
つまり、「原因は何であれ、やることは変わらない」ということなんです。
もし、悪化してしまったときは、「原因は何だろう?」
ではなくて、「ああ、まだそういう体の状態なんだなぁ。もっと良くなるように、引き続きやることやって頑張っていこう」と思うだけでいいのです。
サッカーをやっている彼には、さらにこう付け加えました。
「試合で負けた時に、『負けた理由は何だろう?あれが原因かな?これが原因かな?』なんてあんまり考えないじゃないですか?『こっちが弱かった。まだまだだな。もっと練習しよう』ただそれだけじゃないですか?アトピーもそれと同じで、「まだまだだな。もっと養生しよう』ただそれだけなんです。」
と。
そのアトピーの悪化、トータルで見れば、むしろ良くなっている
「良くなってると思っていたのに、悪化すると、何が原因かわからないし、すごいへこむんですよね。僕みたいな人って、他にもいるんですか?』
そう聞かれたので、私はこう答えました。
「そうですね。多いですよ。むしろみんな、そうやって治っていくんです。だから、むしろ今回は、そうやってみんな治っていくというグループに〇〇さんも仲間入りしたということだと思っているんです。赤味が増した一部分だけを切り取ると「悪化」ですが、トータルで見た時に、そういう経過をたどっているということは、治る方へ向かっている大きな流れの中の一部だということです。そういう意味で、わたしとしては何の不安も心配もしていないですし、このままいけば大丈夫ですよ」
と。
すると彼は、「そういってもらえるとすごく安心します。そういえば、今までなら赤くなってしまうと、何日も赤味が引きづらかったんですけど、今回の場合は翌朝には引いていたんで、やっぱり治りやすくなっているのかなって思いました」
と言いました。
安心して冷静になると、自分でもよくなっている点を認識できるようになっていました。
思考放棄して、余ったエネルギーをアトピー修復に回した方が価値がある
何が原因で悪化したかは、治療家が考えることです。
患者さんの方は、不安になったり、モヤモヤするくらいなら考えない方がいい。
そんなことをぐるぐる考えている体力が無駄遣いになるからです。
落ち込むことも余計なエネルギーの無駄遣いですし、悪化の原因をネット検索することも無駄な消費となります。
だったら何も考えないで、余ったエネルギーを皮膚修復に回した方が、価値ある思考放棄なのです。
アトピーは波のある病気。波にのまれるな
アトピーは波のある病気です。
悪化の波が来るたびに悲しみ恐れ、落ち込み不安になるなど無駄なことです。
波なんてものは寄せては返します。
いちいちそれに飲まれないようにしてください。
淡々とやり過ごすことが大事です。
アトピーは人生のほんの一部分
良くなって喜ばず、悪くなって悲しまず。
良くなって「また悪くなるんじゃないか」
悪くなって「ほらやっぱり悪くなった」
これじゃあ、心がアトピーに支配されてしまいます。
アトピーは今のあなたの一部分を占めてはいますが、それがすべてではありません。
「私の人生はすべてがアトピーだ」というあなたはぜひ「ヒロアカ」読んでみてください。
少なくとも、読んでるときは、激アツになれることでしょう。
良ければ良いように、
悪ければ悪いように、
淡々と過ごしましょう。