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アトピーの原因が「トラウマ」だといわれた話

いつも来ている20代女性の患者さん。

普段は一人で来院するが、今回はお母さんと一緒に来院。

母親と一緒に来るのは、初診以来だったと記憶している。

この方は、スピーディーに、というわけではなかったが、波を繰り返しながらも徐々に、少しずつではあるが確実に回復していた女性だ。

ある時「もっと早く良くしよう」という思いから、あるインターネットサイトで、手作りの、皮膚に塗るような保湿クリーム?ローション?みたいなものを購入し、皮膚に塗布していた。何回かメッセージのやり取りはしていたらしい。

付けてしばらくすると、塗った部分が真っ赤になって、傷が広がったとのこと。

その出来事、皮膚の状態の写真を送って、サイト管理者に問い合わせたところ、送られてくる写真を見ただけで「それは、幼少期に父を亡くしたことによるトラウマが原因だ」といわれたという。

そのやりとりを知ったお母さんが、疑問に思い「どう思うか?意見を聞きたい」ということで私のところに、共に来院。

しばらく経過を聞いた後、皮膚を見せてもらう。

見た瞬間に「何か塗ってるものが合ってないな」という印象の赤味だったので、「合ってないと思いますよ」と一言。

そのほかいろいろな話をして、納得してもらい、施術に入った。

ひとまず、皮膚に塗るのはお休みすることとなった。

・・・

一瞥即解「トラウマ」だと。

まじかよ。。あの傷をトラウマと診たてるのかよ。。俺なら口が裂けても言えないなぁ。

「トラウマ」だって・・・

「ウマシカ」だよぅ。。

言い過ぎました(-_-;)

まあ、そういう私も、

一瞥即解「塗り過ぎ」と言ったんですが(笑)

エビデンス重視のドクターからすれば、五十歩百歩なのかもしれませんね。

 

ネットでアドバイスをしてくれた方は、自分で重度アトピーを克服した方だそうで、主にメンタル面から変化を促すようなアプローチをしているらしいです。

このような、「自分でアトピーを克服した」という方の発する言葉はとてもパワーが強く、今現在アトピーに苦しみ、揺れ動いている方にとっては、とてもすがりたくなるような人であり、その人が多くの人を改善に導き実績を出しているとなれば、なおさら言うことを支えにしていくと思います。

それで救われる人はそれでいいのです。

その方から発する言葉に勇気づけられ、励まされ、前向きに頑張ろうという風になるのであれば、それでいいのです。

オカルトだろうがスピリチュアルだろうが、エビデンスだけでは超えられない壁があるのだから、自分にとっての支えが見つかったのならそれを支えにがんばればいい。

「トラウマ」だといわれて、そこに、本人が「そういってもらえて納得できる」「安心できる」そう思えるのなら、それでいいと思う。

ただ今回のこの女性のケースでは明らかに心身動揺してしまっている。

「自分のことがわからない」というようなことを言うくらいの状態にまでなっていた。

その時のその言葉には救いはなかった。

 

 

「でもさ、そんなこといったって、どうすればいいわけ?」

こう思われるような言葉はなるべく使いたくないです。

 

今回の記事は、「言葉は諸刃の剣である」ということを自分の肝に銘じるために書いています。

トラウマ云々を議論したいわけではありません。

 

人は生きているだけで誰かを、何かを傷つけています。

無自覚に、恐ろしいほどに、触るものみな切り付けて生きているということを自覚せねばいけません。

何気なく発した言葉も、強烈な刃となって周りの人を切りつけます。

そして、実体験から得られた教訓でさえ、その伝え方を間違えれば、凶器になりえます。

自分にとってのそれが正解であったとしても、それが他の人には不正解となるのがアトピーの治療です。

正しいと思って、腹の底から「こうだ!」と思ったアドバイスが、その人にとっては深く傷つき、うずくまる結果になることもあります。

「正しい」「間違っている」という考えだけではアトピー治療は乗り越えることが難しいです。

 

人を救うような、魔法の言葉をかけることはできなくても、

人が良くなっていく様を邪魔するような言葉や振る舞いはしたくないといつも思います。

 

「治療」と称してどれだけ回復の邪魔をしているか。

「あなたのためにアドバイスしています」なんて言葉を使って、押しつけがましいことをしていないか?

鍼の施術においても、言葉のチョイス一つにしても、本当にシビアに、大切にしていかないといけません。

「その思いをぶつけることが、ほんとにその人にとって、適ったことなのかい?」と戒める必要があります。

 

アトピーの人の周りのご家族の方は考えてみてもいいかもしれません。

今回の場合の、彼女のお母さんは、非常に冷静に、自分の考えは持ちつつも、それを押し付けることなく、彼女の考えを尊重し、「いよいよ危ない」という段階で、ご相談に来られました。

タイミングといい、言葉の選択といい、話していて、本当に彼女を思った行動・言動であると感じました。普段からよく見ているし、それぞれが依存しあわず、自立した関係性を築いているのだということがわかります。

しかし、いろんなアトピーの方とお話をしていると、家族の言動にいちいち傷ついている人がとても多いです。

家族関係が悪いとか、そういうことではなく、「周りの気遣いの言葉がイライラする、疲れる」そういった本音もよく聞きます。

はっきり言ってしまえば、心配の押し付けが鬱陶しいということです。

 

本人のためのアドバイスなのか?

自分の不安をぶつけるだけの助言ではないのか?

「私がこうやってほしい」と思っていることをあの子にぶつけているだけではないのか?

 

「あなたのために言っているのよ」

このセリフをしばしば使っているようであれば、気を付けた方が良いでしょう。

 

家族を心配する思いは本物だと思います。

でもその心配を、思っていることをストレートに表現することが、果たしてこの子のためになるのかどうか?

・・・

とても難しい問題ですね。

ここを意識したことなかった人はぜひ、そういう思いでアドバイスしてあげてください。

 

偉そうに言っている私ですが、私も、「チョコなんて食べてると、アトピーは治るの難しいっすね~」なんてことをよく言ってます。

「アトピーをよくするには、チョコレートは絶対やめた方がいい」なんて思っていても、こういう言い方だと、深く傷ついている人がいるのかもしれません。

考えたこともありませんでした。

もっと良い言い方があるのかもしれませんね。

「猪口齢糖をお召し上がりになられますと、お体の回復に少々お日にちかかることもございますようでございますれば、、、」

・・・

とにかく言葉は大事。

発するにも受け取るにも取捨選択。

何を言うかでなく、相手が何をどう受け取るか?

そこに想像力を働かせること。

想像力の欠如した人間にはなりたくない。

勉強になりました。