「アトピーが治ったら結婚して子供を作りたいと思っていました。
でもそれも難しいのかな。
この苦しみを子供にさせるわけにはいかないので」
長いことデュピクセントを使い続け、症状は落ち着いていた。
だが、これを一生使い続けても良いのかというと、そうではない。
薬の使用をやめてみた。
そして自分でできるあらゆることを試した。
鍼灸もその一つ。
しかし再び悪化した。
顔が真っ赤になり、かゆくてたまらない。
仕事にも支障をきたす。
迷った挙句、デュピクセントを使い続ける決断を下した。
彼にとってそれは、子供を諦めるということと同義だった。
通院期間は2か月未満だった。
あまりに早すぎる決断のように思う。
もう少し時間があればと強く思った。
しかしそれは、私の側から眺めた視点に過ぎない。
幼少期から抱えている彼にとっては数十年の悩み。待つことはできない。
「アトピーが子供に遺伝する」という考えに対してお伝えしたいこともあったが、今日この治療をもって最後にする、という固い意志があったし、そういう状態ではなかった。
完治を諦めざるを得なかった無念やくやしさは計り知れない。
目を閉じながら話す彼のまぶたは震えている。
震えながら、気持ちを押し殺しながら話してくれた。
わたしへの感謝も述べてくれた。悔しいはずなのに。
自分の本来の望みに対して、それを覆い隠すように、強く言い聞かせるように言葉を紡ぎだす。
その姿と、その望みをかなえられない自分に対して、もう、胸が張り裂けそうなくらい申し訳ない思いが込み上げている。
・・・
これは、去年9月に下書きのまま保存しておいたブログ記事。
ほんとうは続きを書こうとしたが、ここから先は書けなかったので、そのまま保存しておいた。
独身男性。
アトピーのことについて、両親とも凄まじいやり取りがあったことを聞いた。
何とか力になりたかったが、彼の求める基準には追い付かなかった。
改めて、人様の人生に関わる仕事をしていることを思い知った瞬間でした。
もしこの方がまた来たとしたら、その時に自分は、今度は、彼の力になれるだろうか?
常に胸にそういう思いを抱いている。
無力感と、申し訳なさと、自分へのいら立ち・不甲斐なさ
自分はこういう思いを一体いくつ抱えているのだろうか?
生きている限りは増え続けてしまうものなのだと思うが、しかし、極力それを減らしていきたい。
年明け早々、治らなかった症例を書くなんて、どうかしてるぜ、とも思う方もいるかと思いますが、いまがタイミングなのかなと思い、載せることとしました。
「妥協を許さない」
ありふれた言葉ですが、今回の移転にあたって自分の中に掲げた言葉です。
今年の抱負と言えば、そうなるのかもしれません。
恐ろしい言葉で口にするのも怖いですが、1月も終わりなので、決意めいたものを書いてみました。
「お前の妥協1つで、相手の人生が変わるんだぞ?許していいわけねぇだろ?わかってんのか?あぁ?」
って、頭の中で言われています。
ですので、
「何一つ妥協しない」
ブログの更新頻度以外は。
では、いずれ、また。