「センター試験」と呼んでいたあの頃が懐かしい。
最近は「共通テスト」というらしいですね。
いまは一月中旬。
現在当院へも、数名の高校三年生、受験生が通ってきています。
そのうちの一人の男子高校生が「鍼ってどうですか?」
と興味を持ってくれてました。
「どうですか?」というのは、「仕事として」という意味で、つまり「仕事として鍼灸師の資格に興味を持っているけど、実際のところ食っていけるのか?」という心配なわけです。
人生を左右する進路において、「鍼灸師」が選択肢に上がっているということ自体、とてもうれしいです。
彼には、色々と包み隠さず現実を伝えました。
同時に、私個人の猛プッシュも付け加えておきました(^^)/
「なんで鍼灸師に興味を持ったの?」
と聞くと、
「いやなんか、救われる気分だったんです」
と彼は言いました。
夏が過ぎ、長そでを着始める時期に初診でやってきた彼の顔は、アトピーによる炎症で真っ赤になっていました。
受験勉強がいよいよピークになろうかという時期。そんな時期にかゆみで眠れず、勉強も集中できない。
ダメだとわかっていつつも、顔面を手でたたくことを止めることができない。
「気が狂いそうになる」と、彼は両親に話しました。
それを聞いたお母様が「これはただ事ではない」と、すぐさま私のところへ来られました。
アトピーという病気には、猛烈なかゆみを伴います。
そのつらさは、経験した人しかわからず、家族の人の無理解に苦しむ人もしばしばです。
「アトピーなんてかゆいだけでしょ?」と、蚊に刺された程度の認識しか持っていないような人が両親だったりすると、その認識を改めるということはほとんどないのが現状です。
何度訴えても通じないので、この辛さをわかってもらおうという気持ちも失せてしまい、「話すだけ無駄」とあきらめてしまう方が非常に多いのです。
彼のお母様が「今までの付き合い方ではダメだ」とその認識を改めることができたというのは、柔軟で聡明な心の持ち主だということです。
それだけ家族への認識、本人がどう思っているか・考えているのかということを真剣に受け止め、それまでの捉え方を変えるということは難しいのです。
問診を終え、ベッドへ案内し、身体を診て、説明。
それから治療に入り、プライベートな会話もしました。
「どんな学校に行きたいの?興味のある学部とかあるの?」
「いや、まったくないんです。やりたいこととか何もないんです。ほんと大学はどこでもいいし、別に就職だっていいかなって感じなんです。でも、大学出ておけば、いずれやりたいことが見つかったときに選択肢が広がるとか、就職には有利かなと思っているってだけなんです」
初診ではこんなようなことを言っていたのです、彼は。
それが数回治療を受けたあと、「鍼灸の進路についてお話を伺いたい」とわざわざLINEを送ってきてくれたのです。
まだ2,3回治療したのみで、治療効果も劇的とはいいがたい。
「それなのになぜ?」と、当然思うわけです。
それがあっての「なぜ鍼灸に興味を持ったの?」という質問につながります。
で、彼の答えが「救われる思いだった」ということでした。
いやぁ、、しびれますよね。
すごい一言を頂いてしまったなと思いました。
鍼灸の持つパワーってすごいなと思います。
中国四千年の偉大なる力。
生後四十年の男の微かなる力もちょっとは!(笑)
何にも興味なかったのに、ごく短期間の間に人生の進路の選択肢の一つに上がってしまうなんて、すごいと思いません?
今後鍼灸の道に進むのかどうかはわかりませんし、そこはそんなに問題ではないのです。
彼にとって「救われた体験がある」という事実が大事なのです。
これから長いこと生きていくうえで、「救われた経験がある」ということがどれだけ心強い事か。
そういう経験のきっかけになれたことが、私はうれしかった。
いやあ、良い仕事したなぁ!
・・・
いやいや、仕事終わっとらんがな!ちゃんとアトピーを改善させるという大仕事が残っとるわ!!!
これからも、わずかばかりの力ではありますが、振り絞って事に当たることを、静かに誓った夜でした。
まだまだ受験が続く、一月中旬。頑張ってほしいと、陰ながら応援しています。