「息子が『寝たくない』って言って、夜中布団に入らず、ソファに移動してしまうんです」
そういってご相談されたある中学生のアトピー性皮膚炎を持つ男の子のお母さまからのご相談。
続けて、「先生からも、布団で寝るように言ってもらえませんか?」とお願いされる。
アトピー改善の必須要件として、いかに睡眠状態をよくするかということがあげられます。
しかし、一日のうち、夜10時~2時という時間帯は、アトピー性皮膚炎が最も悪化する時間帯でもあります。
アトピーさんは身をもって痛いほどわかっている事実ですね。
なぜ夜中にかゆくなるのか?
「睡眠のゴールデンタイム」って話を聞いたことはあるでしょうか?
夜10時から2時がその時間帯なのですが、このゴールデンタイムっていったい何の時間なのでしょうか?
実は、この時間に「体の修復」を行っているのです。
つまり「皮膚の修復」が最も盛んになる時間帯ということです。
身体というのは、夜中に体の修復や、体にとって不要なもののお掃除を始めるのです。
不要なものというのはつまり、ゴミということです。
体内に不要なごみがいっぱいたまってしまって、うんこやおしっこ、発汗などからの排泄では追い付かないくらいの量になり、それがだんだん体に蓄積して、「もういよいよ満杯です」という状態になり、その排出経路を皮膚に求めた結果、皮膚にかゆみが起こり、傷を作り、汁を出したりすることになり、その状態をアトピーと呼びます。
アトピー状態が改善しない要因の一つに、体内にごみが溜まり過ぎているという点が挙げられます。
つまり、アトピーというのは、簡単に言ってしまうと、「体の中に不要なものがいっぱいたまってしまっている状態」といえます。
ゴミがいっぱいたまってしまったらどうしますか?
捨てますよね?
捨てたそのごみはどうなりますか?
運ばれますね?
どこに?
ゴミ焼却場ですね?
・・・
そうです。
ゴミは燃やすものなんです。
燃えれば形はなくなり消えますね。
先ほど、「身体は夜中にお掃除をする」といいました。
これは言葉を言い換えて表現することができます。
「身体は夜中にごみ焼却を始める」
そうです。燃えるんです。
燃えるというのは、火です。炎です。
つまり、これが、炎症ということなのです。
夜中にかゆいというのは、炎症が起こっているから。
ごみ焼却を行っているから、夜中にかゆくなるんです。
体は夜中に、身体に溜まったゴミ掃除をする。
身体に溜まったゴミ焼却。
つまり、身体の中に火がつけられて、不要なもののゴミ焼却を始めるんです。
火の勢いが強ければ強いほど、体に感じる感覚として「かゆい」ということになるのです。
なので、「夜中のかゆみが全然楽にならないな」「かゆみで眠れなくてしんどい」という人は、「あ、まだまだ燃やさなきゃいけないゴミが身体にいっぱいたまっているんだな」ととらえて頂くといいかと思います。
夜中にかゆみがあるという状態は悪いことではない
夜中にかゆみがひどくなると、やはりつらいし、しんどいことですし、その苦痛症状は早く緩和させた方がいいのですが、ここで一つ注意点があります。
それは、「夜中にかゆみがあることは悪いことではない」
ということです。
ま、いいことでもありませんが。
体の中にいっぱい不要なものが溜まっているので、体の方は、そのたまったゴミを燃やしているだけなのです。
ゴミが溜まればその分火力が強くなります。
でもそれって当然のことですよね?
炎症が強いとは言うけれど、体としてはたまった分を燃やすお仕事をしているだけなので、しんどいとは思うのですが、悪いことではないのです。
むしろしっかり働いてくれているので、内心「ごくろうさま」と思うくらいでちょうどいいのです。
もしあなたが夜中にかゆみが強いのであれば、「ああ、まだ燃えてるものがいっぱいあるんだな」と思ってください。
たとえば、あなたがご飯をたくさん食べたとします。
その結果、うんこがたくさん出たとします。
これって、悪化だと思いますか?
え?いったい何が悪化なの?って思いますよね?
食べたら食べた分出るのは当たり前のことじゃないの?って。
これとおなじなんです。
かゆみが出るのは溜まってるものが燃えているからなんです。
溜まれば溜まるほどたくさん燃えているだけなのです。
これって、悪化だと思いますか?
不都合な症状ではあるけど、当たり前のことなんです。
うんこもかゆみも同じ事です。
かゆい=悪い・悪化
こう捉えてしまうと、そういう認識に引っ張られてどんどん悪い方へ行ってしまいます。
だから、「これは、自分にとってはいいことではないけど、悪いことでもない、当たり前のことなんだ」
いいことでもなく、わるいことでもなく、ただ当たり前のことを体は行っているだけです。いいも悪いもないんだという意識でいてもらうことは、アトピーを早く経過するうえで、大切なことかなと思います。
この方が少しは安心できますでしょ?
少しでも自分に都合のいいように、自分が楽になるようなとらえ方・考え方をすることが大事です。
現状が変わらなくても、考え方は変えられます。
考え方次第で楽になるものが少しでもあるのなら、そうしたほうがいいのです。
眠れなければ無理に寝ようとしなくていい
冒頭で、中学生のお母さんが「布団で寝るようにって言ってください」と私におっしゃいましたが、私はこう答えました。
「布団で寝たくなければソファで寝たっていいんですよ」
かゆみが強い時に眠ろうとしても、それは無理な話なんです。
それなら少しでも自分が楽にいられる場所に移動すればいいのです。
それが彼の場合はソファだったということです。
ソファで横になっているだけで、たとえ眠れなかったとしても、本来の睡眠で補えるはずだった回復の結構な割合をカバーできるものです。
だからそういう時は遠慮なくソファで寝かせてあげるべきなのです。
ご両親は心配だから、「しっかり眠ることがアトピーを治すには大事です」なんて、知っている一部分だけを思い出して、無理やり眠らせようとします。
確かにぐっすり眠ることは大事なんですが、それができないなら次善の策でいいのです。
むしろ良くないのは「布団で眠ることができなかった」「今日も夜中に起きてしまった」なんてことをいつまでも悩んでしまうことです。
さっきも言ったように、寝落ちできなくても、横になっているだけで体は修復作業を行ってくれます。
これも考え方でして、眠れなくても、全くダメなわけじゃない。それなりに回復はできるはずだから、ソファで過ごせばいいや。そんな感覚でいてもらえればなと思います。
大事なのは眠れなかったことにがっかりしないこと。
炎症・かゆみは悪者ではないということ。
良くもないけど悪くもない、ただただ当たり前の働きであるということ。
それだけ覚えておいてください。