ある23歳の男性。
その段階で当院へ。
治療して数ヶ月。
治療するたびに体の状態や、前回からの変化などを積極的に話してくれる方です。
その彼がこうおっしゃいました。
「こないだ、車の運転してたら、『ゆっくり走るのってすごい気持ちいいんだな』って思いました」
「『ペダルを通して伝わるエンジン音ってこんな感じなんだ』ってはじめて気づきました」と。
今まではガンガンスピードを出して脇を走る車に抜かされないように、競うように走っていたのに、今は、そういうゆっくりとした走り方が心地よいとのことでした。
いつも身近に使用しているもの、触れている者について、感覚・認識を改めた瞬間の「あ!」という肉体とのつながり・再発見は面白いものです。
他にも色々と感覚の変化が起きているようで、
「今まではアップテンポの曲を聞いていたのにゆったりとした曲が好きになった」
「ヒーリングミュージックを夜寝る前に聞くと、同じ周波数の動画でもこっちの動画はすぐ眠れるのに、こっちの動画だと腕がかゆくなる」
など、体に起きる変化をどんどんキャッチできるようになっていました。
「一体俺はどこに行くんでしょうか?」
とぼやいていました(笑)
この話を聞いて、「感性が広がってきていていいなぁ」と思いました。
顔の赤みはかなり引いてきて、まだ全体的に安定しているとはいいがたいのですが、体はどんどん変化していて、良い方へ向かっています。
アトピーの治りが遅い人は、体に対する感覚がかなり鈍麻している一方で、かゆみに対する変化だけにしか意識が向かず、そこだけ敏感・過敏に捉えがちです。
たとえ些細なことでも体に起きる変化を認識できる方は、治りやすいと言えます。
「かゆみでつらい」という人に、「かゆみ以外の部分に目を向けろ」なんて、言うのは簡単なのですが、それを実行するのは簡単なことではありません。
だからこそ難治性疾患なのです。
そういう意味でも彼の感覚変化の報告を聞けるのは、私の密かな楽しみになっています。
受けた方の感性が鋭くなるような治療っていうものを、もし再現できるなら、「やりたいなぁ」と思いますね。
こういう報告に結構喜んでいる自分がいます。
鍼治療を通じて苦痛を除去する、というのも当たり前に大事なのですが、「感じ取る喜び」「自分の体を再認識・再発見する喜び」みたいなものも一緒に味わえると、これは人生の豊かさ・愉しみにつながります。
小さな目標としては「かゆみを無くす」「赤みを無くす」「眠れるようにする」だったりするわけですが、それってどういうこと?って言うと、大きな意味では「来た人に幸せになってほしい」ということなんだろうと思います。
そのうちの一つに「感覚・認識が変わる」という項目も、入っているんだなぁということを、再認識しました。
ではまた。